ヘヴィメタル初心者の入門にオススメの名曲&名盤紹介

2017/01/20

BABYMETAL その他/コラム


 皆さんはヘヴィメタル(以下メタル)という言葉を聞いてどのような音楽をイメージするでしょうか?とにかくうるさい? デスボイス?ギターの速弾き?ある程度メタル以外のロックに入れ込んでいるがある方なら「ギターを速弾きするだけのワンパターンでダサい音楽」と思っている方も居るかもしれませんね。

 ここで私が「メタルの定義」を説明、あるいは「これが100%典型的なメタルだ!」という曲を紹介したいのは山々ですが、それは非常に難しいです。メタルに分類されるバンドの音楽性は多岐にわたる為、ギターやドラムの金属的でヘヴィな音色を除けばほとんど共通点が無いと言っても過言ではないからです。歌やギターの美旋律を重視したバンド、マシンガンの様なドラムと悪魔の様な歌声(デスボイス)で反宗教を主張するバンド、地を這う様なスロ-テンポで10分以上引っ張るバンド、ジャズや現代音楽の和声を導入した前衛的なバンドなど、非常に多岐にわたります。メタラーである私の贔屓目抜きで客観的に見ても、その音楽性の幅広さは相当のレベルだと思います。

 ところで、メタルという音楽が日本人にとってかなり馴染みの深い音楽なのはご存知でしょうか。DEEP PURPLEQUEENといったハードロック(メタルとは微妙に違うジャンル)バンドや、
聖飢魔II(デーモン閣下のバンド)、X JAPANといった国産メタルバンドは広く知られていますし、近年のいわゆるラウドロックヴィジュアル系に分類されるバンドにはメタル要素強めのバンドも多いです。また、ZARDの名曲「負けないで」の伴奏のギターは実はメタル風だったり、アニソンにはメタル出身の作家が関わって居たり、日本では意外とメタル(的要素を含む音楽)は受容されてきました。という訳なので、メタルに馴染みが無いと思っている方でも、意外とメタルを聴いていたケースは少ないかもしれません。

 この記事では皆様にメタルという音楽の素晴らしさ、幅広い音楽性を少しでも知って頂く為、メタルを知らない方でも取っつきやすいバンドを中心に選びました。メタルシーンで高く評価されている偉大なバンドや、皆さんが抱いているメタルのイメージとは異なるであろうバンドを選んだので、全ての曲をチェックしてみて頂けると幸いです。

METALLICA
『Metallica (The Black Album)』収録の大ヒット曲。

『Master Of Puppets』収録のドラマティックな大曲。
 1981年に結成されたアメリカのMETALLICAは、アルバムを出せば世界数十か国で1位を取るのが当たり前という、メタル界のみならず音楽界で最も人気のあるグループの一つです。初期のスピード感とザクザクと刻むギターを重視した作風(スラッシュ・メタル)から、次第にミドルテンポの歌を重視した作風へとシフトし、世界的人気を博しました。メタルに興味がある人、というか少しでもロックが好きなら知っていて当たり前の存在ですので、絶対に聴いておきましょう。

 
 ベストアルバムを出していない彼らですが、特に評価が高いのは、スラッシュ・メタルの激しさにクラシック的な大曲構成を導入したメタル史上No.1の名作『Master Of Puppets』と、親しみやすさとヘヴィさを強調した世界的大ヒット作『Metallica (The Black Album)』の2枚です。どちらも違った魅力があるので、メタル入門として必聴です。

JUDAS PRIEST
 
 1969年に結成された英国の大ベテランJUDAS PRIESTは、現在まで続くメタルの様式を確立したバンドとして知られています。メタル・ゴッドの異名を持つロブ・ハルフォードの異様なハイトーン・ボイスと、叙情的な"泣き"のメロディを盛り込んだドラマティックなツインリード・ギターのインパクトは絶大で、世界中のメタルバンドに影響を与えました。メタルに慣れてない人にとっては特異なヴォーカル・スタイルに抵抗があるかもしれませんが、他の音楽に無い高揚感を表現するのにこれほど相応しいヴォーカリストは居ないでしょう。


Amazonリンク
 JUDAS PRIESTの作品には名盤が多いですが、『Painkiller』が特にスピード感とアグレッシブさが際立っている名作です。メタルファンが選ぶ名盤ランキングの様な企画では必ず上位に食い込みます。


IRON MAIDEN
 1980年に1stアルバムをリリースしたイギリスのベテランIRON MAIDENは、METALLICAやJUDAS PRIESTと並んでメタル界で最も偉大なバンドです。ベースがアンサンブルを牽引するスタイルや音質は現代のメタルとはやや趣が異なりますが、叙情的で勇壮なツイン・リードギターのコンビネーションや、ヴォーカルのブルース・ディッキンソンの驚異的な歌唱力は世界中のバンドに大きな影響を与えました。


Amazonリンク
 驚異的な名作を連発してきたIRON MAIDENからオススメの一枚を選ぶのは非常に難しいですが、上記の名曲が収録されているのは『Powerslave』です。 
 
NIGHWISH
 メタル大国フィンランド出身のNIGHTWISHは、ヨーロッパ全土で屈指の人気を誇る女性ヴォーカルのシンフォニック・メタルバンドです。映画音楽に影響を受けた壮大な編曲によるメタル特有の大仰さと、普遍的なポップさの兼ね備えた歌メロが両立しています。ソプラノ・ヴォイスを聴かせるターヤ・トゥルネン(現在は脱退済)のヴォーカルは非常に美しく、メタルを普段聴かない層とメタラーの両方に訴えかける力を持った稀有なバンドの一つです。

 ちなみに、女性がヴォーカルのメタルバンドなんて珍しい、と思う方は多いかもしれません。たしかに、他のジャンルと比べるとメタルのミュージシャン全体に占める女性の割合は低い方ですが、それでもメタルは世間で思われてるよりは遥かに女性ヴォーカリストが活躍している分野です。特にシンフォニック・メタルゴシック・メタルと呼ばれるジャンルで女性ヴォーカリストは多く、WITHIN TEMPTATION, LACUNA COIL, EVANESCENCEといったバンドが特に著名です。



Amazonリンク
 NIGHTWISHのアルバムは名作が多いですが、大ヒット作『Once』が特にオススメです。上記の様なポップな曲、10分を超える壮大な大曲、さらにはメタル要素ゼロの静謐なバラードまで幅広い楽曲が収録されています。

SLIPKNOT
 1999に1stアルバムをリリースした"猟奇趣味的激烈音楽集団"ことSLIPKNOTは、現役メタルバンドの中で最も人気のあるバンドの1つです。メタルを基調にハードコア・パンクやヒップホップといった多様な音楽を見事に融合させており、決して見た目のインパクトだけで売れている類のバンドではありません。激しさ一辺倒ではなく、上記の曲の様にクリーンな美声を響かせる楽曲があったりと、曲調の幅広さ


Amazonリンク
 彼らのオリジナル・アルバムはいずれもハイ・クオリティですが、入門編としてはライブでの定番曲が網羅されたベストアルバム『Antennas to Hell』が最も適していると思われます。

DRAGONFORCE
 イギリスのメロディック・スピード・メタル(パワー・メタル)バンドDRAGONFORCEは、親しみやすい歌メロと圧倒的なスピード感で大人気のバンドです。メロディック・スピード・メタル(通称メロスピ)はコード進行やメロディの質感でJ-POPを連想させる部分が多く、その為か日本で特に人気の高いメタルのサブジャンルの1つです(X JAPANの多くの楽曲もメロスピ)。ギターソロは「速弾きしてるだけ」と揶揄されがちですが、そういったある種のダサさ、バカっぽさもメタルという音楽の魅力の1つだというのが多くのメタル好きの間での共通認識です。


Amazonリンク
 入門編としては代表曲が多数収録されたベストアルバム『Killer Elite』がオススメです。

ARCH ENEMY
 スウェーデンのARCH ENEMYメロディック・デス・メタル(メロデス)の代表するバンドの一つです。女性とは思えないアリッサ・ホワイト=グラズの凶悪なデスボイスと、それとは対照的な日本人好みのメロディアスなギターが魅力でです。このジャンル(メロディック・デス・メタル)で特徴的なポイントは、基本的に歌ではなくギターが基本的に主旋律を担っている点です。メタルに慣れていない方は凶暴なヴォーカルに耳が行きがちかもしれませんが、ギターに耳を傾けてみると、意外な程の美旋律を弾いている事が分かると思います。

 
 上記の楽曲が収録された『War Eternal』や、野性味溢れるリズム感がウリの前任ヴォーカリスト(男性)と泣きのギターメロディが秀逸な『Burning Bridges』といった作品が特に人気です。

SOILWORK
 スウェーデンのメロディック・デス・メタルバンドSOILWORKは、デスボイスとクリーンボイス(メタル界では普通の歌声をデスボイスと対比してこう呼ぶ場合がある)を両立する手法をメタル界に広めたパイオニア的存在です。こうした激しさと親しみやすさを両立させ楽曲にメリハリを付ける手法は、本邦のいわゆるラウドロックに分類させるバンドの間でも広く用いられています。また、こういったデスボイスとクリーンボイスを両立させたバンドの多くはメタルコアと呼ばれ、若年層を中心に高い人気を誇っています。こちらのメタルコア紹介記事で、IN FLAMESKILLSWITCH ENGAGEといったパイオニアのバンド等を紹介しています。


Amazonリンク

DREAM THEATER
 アメリカのDREAM THEATERプログレッシヴ・メタル(雑に説明すると、長尺で複雑さ重視の技巧派メタル)を代表するバンドです。名門バークリー音楽院に在籍していたメンバー達の高度な作編曲能力、およびそれを演奏する技術・表現力は常軌を逸しており、彼らの楽曲を聴けば「メタル=雑音」というイメージは完全に払しょくされるのでは無いでしょうか。


Amazonリンク
 彼らの作品中最も評価が高いのは2nd『Images and Words』でしょう。10分を超える複雑な楽曲でも聴き手を全く飽きさせない圧倒的な構成力が光る、メタル史に残る金字塔です。


PERIPHERY
 ジェント(Djent)と呼ばれる変則的リズムのギター主導のバンドが2010年頃から人気を博しており、その分野の火付け役となったのがPERIPHERYです。この記事で紹介した他のバンド達に比べると知名度や偉大さでは劣りますが、シンコペーションや変拍子(上記の曲のサビの一部は7拍子)を巧みに使ったリズム構成と、エモ(邦楽ではONE OK ROCKELLEGARDENが該当するジャンル)風の歌メロを両立させる手腕が見事極まりないバンドです。

 
 彼らの作品はいずれも秀作ですが、上記の曲が収録された『Juggernaut: Alpha』、および『Periphery III: Select Difficulty』(こちらのレビュー参照)が親しみやすさでは際立っている様に感じます。

BLACK SABBATH
  1968年にイギリスに結成されたBLACK SABBATHは40年以上に渡って活動してきた大ベテランで、元祖ヘヴィメタルと呼べるミュージシャンの1つです。初期作品におけるスローで邪悪な旋律とヘヴィなギターリフは、メタル・シーンのみならずNIRVANAといったロックバンドにも多大な影響を与えました。また、80~90年代にかけて、彼らに影響を受けた遅いテンポと重い音作りの音楽性のバンドはドゥーム・メタルスラッジ・メタルに分類され、コアなメタル好きから支持されています。

 
 彼らの作品には歴史的名盤が多いですが、入門編としては上記の曲が収録された『Paranoid』、あるいは歴史的名曲が多数収録されたベストアルバムが最適かと思われます。


BABYMETAL
 "カワイイ・メタル"を標榜するBABYMETALは、その思想面から「メタルではない」とメタル好きの間から非難されることも多いです。しかしながら、メタルシーンの内外で世界的人気を博しているのは事実ですし、少なくとも音楽的にはメタルだと断言して私は構わないと思います。古今東西のメタルの要素をポップにまとめ上げた音楽的達成は素晴らしく、独創的な音楽性でありながら多くのメタルのサブジャンルへの入り口にもなる素晴らしいグループです。曲調の幅がかなり広いため、YouTubeで色々な楽曲をチェックしてみる事をオススメします。

 
 アイドル音楽を基調にメタル要素を大胆に導入した趣の1st(上記の曲「メギツネ」収録)と、アメリカ・ビルボード誌の総合アルバムチャートで39位にランクインした2nd『METAL RESISTANCE』の両方共オススメです。 


CYNIC
 アメリカのプログレッシヴ・デス・メタル(テクニカル・デス・メタル)バンドCYNICは、ジャズ(フュージョン)の要素を全面的に導入した伝説的バンドです。無調的なコード進行によって生み出される浮遊感のある静謐なサウンド、そして繊細なフレーズを滑らかに演奏する驚異的な演奏技術には並ぶ者が居ません。ハッキリ言ってメタルの主流とは言えない音楽性のバンドですが、メタルという音楽の幅広さを理解してもらう為に紹介致しました。

 
 彼らのオリジナル・アルバム3枚は全て名作ですが、特に評価が高いのはアンダーグラウンドのメタルシーンを震撼させた1stの『Focus』です。とはいえ、上記の曲が収録されたデスボイス控えめかつ主旋律が掴みやすい2nd『Traced In Air』(こちらも高評価)のほうが初心者には馴染みやすいかもしれません。



 如何だったでしょうか。まだまだ紹介したいバンドは100くらい居るのですが、ひとまずこれ位に留めておきました。必要があれば随時更新していきます。この記事が皆さんのヘヴィメタル・ライフのきっかけとなれば幸いです。また、初心者向けのディスクガイドとしては以下の2冊が最適かと思われます。