皆さんはヘヴィメタル(以下メタル)という言葉を聞いてどのような音楽をイメージするでしょうか?とにかくうるさい? デスボイス?ギターの速弾き?ある程度メタル以外のロックに入れ込んでいるがある方なら「ギターを速弾きするだけのワンパターンでダサい音楽」と思っている方も居るかもしれませんね。
ここで私が「メタルの定義」を説明、あるいは「これが100%典型的なメタルだ!」という曲を紹介したいのは山々ですが、それは非常に難しいです。メタルに分類されるバンドの音楽性は多岐にわたる為、ギターやドラムの金属的でヘヴィな音色を除けばほとんど共通点が無いと言っても過言ではないからです。歌やギターの美旋律を重視したバンド、マシンガンの様なドラムと悪魔の様な歌声(デスボイス)で反宗教を主張するバンド、地を這う様なスロ-テンポで10分以上引っ張るバンド、ジャズや現代音楽の和声を導入した前衛的なバンドなど、非常に多岐にわたります。メタラーである私の贔屓目抜きで客観的に見ても、その音楽性の幅広さは相当のレベルだと思います。
ところで、メタルという音楽が日本人にとってかなり馴染みの深い音楽なのはご存知でしょうか。DEEP PURPLEやQUEENといったハードロック(メタルとは微妙に違うジャンル)バンドや、聖飢魔II(デーモン閣下のバンド)、X JAPANといった国産メタルバンドは広く知られていますし、近年のいわゆるラウドロックやヴィジュアル系に分類されるバンドにはメタル要素強めのバンドも多いです。また、ZARDの名曲「負けないで」の伴奏のギターは実はメタル風だったり、アニソンにはメタル出身の作家が関わって居たり、日本では意外とメタル(的要素を含む音楽)は受容されてきました。という訳なので、メタルに馴染みが無いと思っている方でも、意外とメタルを聴いていたケースは少ないかもしれません。
この記事では皆様にメタルという音楽の素晴らしさ、幅広い音楽性を少しでも知って頂く為、メタルを知らない方でも取っつきやすいバンドを中心に選びました。メタルシーンで高く評価されている偉大なバンドや、皆さんが抱いているメタルのイメージとは異なるであろうバンドを選んだので、全ての曲をチェックしてみて頂けると幸いです。
METALLICA
『Metallica (The Black Album)』収録の大ヒット曲。
『Master Of Puppets』収録のドラマティックな大曲。
1981年に結成されたアメリカのMETALLICAは、アルバムを出せば世界数十か国で1位を取るのが当たり前という、メタル界のみならず音楽界で最も人気のあるグループの一つです。初期のスピード感とザクザクと刻むギターを重視した作風(スラッシュ・メタル)から、次第にミドルテンポの歌を重視した作風へとシフトし、世界的人気を博しました。メタルに興味がある人、というか少しでもロックが好きなら知っていて当たり前の存在ですので、絶対に聴いておきましょう。ベストアルバムを出していない彼らですが、特に評価が高いのは、スラッシュ・メタルの激しさにクラシック的な大曲構成を導入したメタル史上No.1の名作『Master Of Puppets』と、親しみやすさとヘヴィさを強調した世界的大ヒット作『Metallica (The Black Album)』の2枚です。どちらも違った魅力があるので、メタル入門として必聴です。
JUDAS PRIEST
Amazonリンク
JUDAS PRIESTの作品には名盤が多いですが、『Painkiller』が特にスピード感とアグレッシブさが際立っている名作です。メタルファンが選ぶ名盤ランキングの様な企画では必ず上位に食い込みます。
IRON MAIDEN
Amazonリンク
驚異的な名作を連発してきたIRON MAIDENからオススメの一枚を選ぶのは非常に難しいですが、上記の名曲が収録されているのは『Powerslave』です。
NIGHWISH
ちなみに、女性がヴォーカルのメタルバンドなんて珍しい、と思う方は多いかもしれません。たしかに、他のジャンルと比べるとメタルのミュージシャン全体に占める女性の割合は低い方ですが、それでもメタルは世間で思われてるよりは遥かに女性ヴォーカリストが活躍している分野です。特にシンフォニック・メタルやゴシック・メタルと呼ばれるジャンルで女性ヴォーカリストは多く、WITHIN TEMPTATION, LACUNA COIL, EVANESCENCEといったバンドが特に著名です。
Amazonリンク
NIGHTWISHのアルバムは名作が多いですが、大ヒット作『Once』が特にオススメです。上記の様なポップな曲、10分を超える壮大な大曲、さらにはメタル要素ゼロの静謐なバラードまで幅広い楽曲が収録されています。
SLIPKNOT
Amazonリンク
彼らのオリジナル・アルバムはいずれもハイ・クオリティですが、入門編としてはライブでの定番曲が網羅されたベストアルバム『Antennas to Hell』が最も適していると思われます。
DRAGONFORCE
Amazonリンク
入門編としては代表曲が多数収録されたベストアルバム『Killer Elite』がオススメです。
ARCH ENEMY
上記の楽曲が収録された『War Eternal』や、野性味溢れるリズム感がウリの前任ヴォーカリスト(男性)と泣きのギターメロディが秀逸な『Burning Bridges』といった作品が特に人気です。
SOILWORK
Amazonリンク
DREAM THEATER
Amazonリンク
彼らの作品中最も評価が高いのは2nd『Images and Words』でしょう。10分を超える複雑な楽曲でも聴き手を全く飽きさせない圧倒的な構成力が光る、メタル史に残る金字塔です。
PERIPHERY
彼らの作品はいずれも秀作ですが、上記の曲が収録された『Juggernaut: Alpha』、および『Periphery III: Select Difficulty』(こちらのレビュー参照)が親しみやすさでは際立っている様に感じます。
BLACK SABBATH
彼らの作品には歴史的名盤が多いですが、入門編としては上記の曲が収録された『Paranoid』、あるいは歴史的名曲が多数収録されたベストアルバムが最適かと思われます。
BABYMETAL
アイドル音楽を基調にメタル要素を大胆に導入した趣の1st(上記の曲「メギツネ」収録)と、アメリカ・ビルボード誌の総合アルバムチャートで39位にランクインした2nd『METAL RESISTANCE』の両方共オススメです。
CYNIC
彼らのオリジナル・アルバム3枚は全て名作ですが、特に評価が高いのはアンダーグラウンドのメタルシーンを震撼させた1stの『Focus』です。とはいえ、上記の曲が収録されたデスボイス控えめかつ主旋律が掴みやすい2nd『Traced In Air』(こちらも高評価)のほうが初心者には馴染みやすいかもしれません。
如何だったでしょうか。まだまだ紹介したいバンドは100くらい居るのですが、ひとまずこれ位に留めておきました。必要があれば随時更新していきます。この記事が皆さんのヘヴィメタル・ライフのきっかけとなれば幸いです。また、初心者向けのディスクガイドとしては以下の2冊が最適かと思われます。