
メタルコアとは
メタルコアとは、2000年代に隆盛を極めたメタルのサブジャンルの一つです。(基本的には)北欧のメロディック・デス・メタルの叙情性と、ニュースクール・ハードコアのヴォーカルスタイル、跳ねる質感、およびブレイクダウン等をかけ合わせたジャンルです。(ちなみに、EARTH CRISISやCONVERGEといった硬派なバンドもメタルコアと呼ばれていますが、基本的には別物です。なので、それら90年代のバンドと区別するために、2000年代以降に流行したものをメロディック・メタルコアと呼ぶ場合もあります。)ヴァース(Aメロ・Bメロ)でデスボイスと共に疾走、コーラス(サビ)でテンポを落としてクリーンボイスという明瞭なスタイルは、容易にお互いのパートを際立たせる事が出来るために一世を風靡しました。が、メロデスをパクリすぎだとか、曲展開がワンパターンでオリジナリティに欠けるという批判の声も一部からは挙がっていました。また、一時期はメタルコアであるというだけである程度の人気が出てしまうという、粗製濫造と非難されてもしょうがない状態だったのは否めません。
コアなメタラーからは何かと文句を言われがちなメタルコアですが、個人的には、メロデスが抱えがちな曲全体の盛り上がりに欠けるという欠点を、明確なサビを導入したことでうまくカバー出来ている部分は大きいと思います。単純なリズミカルさとヘヴィさを強調するブレイクダウンについても、ライブでの盛り上がりやすさに関しては他のメタルに無い長所と言えるでしょう。80年代のメタルバンドとは異なるカッチリとした揺らぎの少ないリズム感のバンドが多く、総じてメタル初心者が取っつきやすい特徴が多いです。
流行の変化や、主要バンドの音楽性の変化or活動休止によって、メタルコアムーブメントはひと段落ついた感があります。この記事では、後続に大きく影響を与えたであろうバンドや、それなりにメタルコアを聴いてきた私が個人的に好きなバンドを中心に紹介していきます。シーン全体の層の厚さではスラッシュ・メタルやデス・メタルをはじめとする他のメタルのサブジャンルには及ばないかもしれませんが、なかなか面白い音楽性のバンドは居ます。
以下、メタルコア、およびメタルコア好きが気に入りそうな音楽性のバンドを紹介していきます。他のバンドについての紹介文も随時追記していく予定です(ちなみに、近年のエレクトロニカやダブステップの要素を大々的に導入したバンドは私の好みでは無いので、当面は扱わないと思います)。
KILLSWITCH ENGAGE
メタルコア・シ-ンの中心に位置するバンド。こちらの独立した記事をご覧ください。KILLSWITCH ENGAGE 全作レビュー (オススメの名盤&名曲紹介)
AS I LAY DYING
彼らのスタイルは模倣しやすいのと同時に、誤魔化しが効かない分バンドのセンスがモロに問われます。実際、このように曲展開をこねくり回し過ぎない典型的メタルコアスタイルを貫いて彼らと並ぶ人気を確立しているバンドは意外に少ないものです。メタルコアの王道を行く、基本に忠実なサウンドなので、メタルコアを知るのなら、 真っ先に押さえておくべきバンドでしょう。
3rd以降のアルバムは全て、メタルコアファンなら揃えるべきですが、メロデス寄りの流暢なギターの旋律が冴えるヒット作『Shadows Are Security』は特に馴染みやすい作品でしょう。代表曲「The Darkest Nights」が収録されています。4th以降はよりスラッシュメタル/デスラッシュ的爆走感と緩急のついた曲展開を重視しており、個人的には「 A Greater Foundation」収録の『Awakened』が特にオススメです。
ヴォーカリストが逮捕されたことにより、現在は無期限活動休止状態。残ったメンバーは新たな ヴォーカルと共にオルタナティブ・メタルバンドWOVENWARを結成しました。
ALL THAT REMAINS
おすすめ作品は何といっても3rd『The Fall Of Ideals』です。楽曲、演奏ともにメタルコアの決定盤といっても過言ではない作品で、全世界のメタルコアファンが絶対に持っているアルバムです。「This Calling」は、メタルコアで最も有名な曲でしょう。逆に、それ以外の作品は3rd程の支持を得られておらず、現在の彼らは、「かつての激しさが無くなった」と従来のファンからの支持を失っているのが現状です。個人的には、4th『Overcome』はなかなか良い曲が収録されているのでオススメではあります。彼らの演奏技術やセンスには確かなものがあるので、アグレッションを取り戻すにしろ、より一般向けにシフトするにしろ、いずれにしても起死回生の作品を期待しています。
SHADOWS FALL
異常に髪が長いヴォーカルのブライアン・フェアの歌唱力のせいか、初期の彼らにはメタルコアにありがちな伸びやかな歌メロが少ないのが特徴です(そういうサビの曲の場合はサイドヴォーカルが代わりに歌っています)。とはいえ、ブライアンのヴォーカル・スタイルを好意的に評価するならば、近年のバンドに多い画一的なものとは異なり、ハードコア寄りのワイルドさ、生々しさがあるのです。好みが分かれますが、好きな人は本当に好きなタイプのヴォーカリストだと思います。また、彼らのギターソロには、テクニカルな速弾き→ツインリードのハモリという、メタラーなら誰でも好きに違いないであろう形式のソロが多いのが特徴です。
「The Light That Blinds」を始めとする、ザクザクとした印象に残るリフが多数収録された4th『The War Within』は多くのメタルファンに受け入れられる音楽性でしょう。ストレートなメタルコアが好きという方には、KILLSWITCH ENGAGEのアダム・デュトキエヴィッチがプロデュースした7枚目『Fire From The Sky』が特にオススメの内容です。歌のメロディとコーラスワークに関しては、彼がかなり監修したと思われる充実度で、ブライアンの歌も非常に上達しています。
リードギターのジョナサン・ドネイズが2013年にあのANTHRAXに加入したため、現在は活動休止中。 『For All Kings』で彼の事を知ったANTHRAXファンは是非SHADOWS FALLも聴いてあげてください。
UNEARTH
2nd『The Oncoming Storm』は、いわゆる"クサメロ"という印象を与える旋律が多いのにも関わらず不思議とイモっぽく無いという素晴らしいバランスの作品です。「Zombie Autopilot」は永遠の名曲。3rd『III: In the Eyes of Fire』
ARCHITECTS
2004年にイギリスで結成されたARCHITECTSは、近年のメタルコア・シーンでなかなか高い評価を得ており、個人的にもイチオシのバンドです。詳しくはARCHITECTS 『All Our Gods Have Abandoned Us』のレビューを参照。
PERIPHERY
IN FLAMES
クリーンボイスを導入したメロディック・デス・メタルバンドとして、多くのメタルコアバンドに多大な影響を与えた偉大なバンドです。詳しくはIN FLAMES 『Battles』 レビューを参照。
プログレッシヴ・メタルやジェントに分類されるバンドで、メタルコアではありませんが、デスボイスとクリーンボイスの使い分けやエモ風の歌メロ等、メタルコア好きなら気に入るに違いないバンドです。詳しくは、『PERIPHERY III: SELECT DIFFICULTY』のレビューを参考にして下さい。
TEXTURES
ジェントの先駆けともいえる偉大なバンドです。楽曲構成や歌メロにはメタルコア的な要素が多く、メタルコアに分類されることもあります。詳しくは、『PHENOTYPE』のレビューに書いております。
IN FLAMES
SOILWORK
IN FLAMESと同じく、多くのメタルコアバンドに影響を与えたバンドです。彼らの音楽性については、以下のコラムをご覧ください(ある程度SOILWORKを知っている人向けかもしれません)。SOILWORKとハードロック (名盤『The Ride Majestic』レビューによせて)